
「サイバー攻撃の脅威が増している」というニュース、よく耳にされるかと思います。もはや大企業だけでなく、中小企業も例外なく狙われています。
そんな中で、会社のセキュリティ対策として「ペネトレーションテスト」(侵入テスト)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、実際に攻撃者が使う手法でシステムに「侵入」を試み、セキュリティの弱点を見つけ出すという、とても重要な対策です。
しかし、このペネトレーションテストには、「Blackbox」「Greybox」「Whitebox」という3つのやり方があります。それぞれの説明を見ても、なんだか難しくてピンとこない…。結局、私たち中小企業は、どれを選べばいいの?
今回は、そんな疑問にお答えします。難しい技術的な話は抜きにして、日本の中小企業の皆様にとって、現実的に見て「これを選んでおけば大丈夫!」と言える最適解を、分かりやすくご紹介します。
ペネトレーションテストって、そもそも何?
あらためて簡単に説明すると、ペネトレーションテスト(略して「ペンテスト」とも呼ばれます)は、あたかも悪意のある攻撃者になったつもりで、お客様のウェブサイトやシステム、ネットワークなどに実際に攻撃を仕掛け、セキュリティ上の弱点(脆弱性)がないかを確認するテストです。
このテストの目的は、攻撃者に弱点を突かれる前に、自ら脆弱性を発見し、対策を講じることにあります。これにより、情報漏洩やシステム停止といった、深刻な被害を未然に防ぐことができるのです。
ペネトレーションテストの3つのタイプ:何が違うの?
ペンテストの主な3つのタイプ、「Blackbox」「Greybox」「Whitebox」は、主に**「テストを行う専門家(ホワイトハッカー)に、テスト対象に関する情報を事前にどれだけ提供するか」**という点で異なります。
- Blackbox Test(ブラックボックステスト
- 提供する情報: テスト対象について、外部から誰もが入手できる情報(例えば、ウェブサイトのURLだけ、会社名だけなど)のみを提供します。内部のシステム構成やアカウント情報などは一切開示しません。
- テストの視点: まさに何も知らない外部の攻撃者が、手探りで侵入経路を探す、というシナリオを再現します。
- 特徴: 事前の情報がゼロなので、情報収集(偵察)の段階からテストが始まります。テストする側にとっては最も難易度が高く、時間もかかります。
- Greybox Test(グレーボックステスト)
- 提供する情報: テスト対象に関する限定的な情報を提供します。例えば、システムの概要、特定のユーザーアカウント情報(一般ユーザー用や権限の低いユーザー用など)、システムの一部の構成情報などです。
- テストの視点: ある程度の内部情報を知っている、あるいはシステムの一部にアクセス権限を持つ攻撃者(例:退職した元従業員、委託先の関係者、あるいは外部からの侵入に成功して一部情報を得た攻撃者など)の視点からテストを行います。
- 特徴: BlackboxとWhiteboxの中間に位置します。ある程度の情報があるため、手探りの情報収集に時間を取られず、効率的にテストを進められます。現実的な攻撃シナリオを想定しやすい手法です。
- Whitebox Test(ホワイトボックステスト)
- 提供する情報: テスト対象に関するあらゆる情報を全て開示します。システム構成図、ネットワーク構成図、サーバー情報、ソースコード、管理者権限など、内部の全てをテスト担当者が把握した状態で行います。
- テストの視点: システム内部の構造や実装の詳細を完全に理解した上で、徹底的に弱点を探します。開発者や内部の人間が自社のシステムをチェックするようなイメージに近いです。
- 特徴: 最も網羅性が高く、システムの根深い脆弱性まで発見できる可能性があります。しかし、その分、事前の情報共有やテストの準備、分析に非常に手間と時間がかかり、費用も高額になります。
なぜWhiteboxテストは多くの中小企業には向かないのか?
Whiteboxテストは、確かに最も詳細な診断が可能ですが、その分のコストと時間的な負担が非常に大きいのが現実です。特にソースコードレビューなどを含む場合、専門家の工数が膨大になり、テスト費用は跳ね上がります。
大企業が特に機密性の高い基幹システムや、国家レベルで重要なインフラに対して行うなど、ごく限られたケースで選択されることが多い手法です。日本の中小企業の皆様が、通常のビジネスで利用しているウェブサイトやシステムに対して行うには、費用対効果の面から見て、あまり現実的とは言えないでしょう。 中小企業の皆様は、IT専門の部署や人材が不足しているケースも多く、Whiteboxテストに必要な情報(詳細な設計情報や最新のソースコードなど)を整理して提供するだけでも、かなりの労力になることもあります。
では、Blackboxテストはどうなのか?
Blackboxテストは、「何も情報を与えない」という点では、外部の攻撃者による現実の攻撃に近いと思われがちです。しかし、これも中小企業にとっては必ずしも最適ではありません。
なぜなら、情報が全くないゼロの状態からテストを始めると、テスト期間の大半が「ターゲットに関する情報収集」に費やされてしまう可能性があるからです。その結果、実際にセキュリティの弱点を探して攻撃を試みる時間に限りが出てしまい、見つかる脆弱性が表面的なものに留まってしまうことがあります。
また、テスト担当者から見ても、手探りの部分が多くなり、効率が悪くなります。限られた予算と時間の中で、できるだけ多くの、そしてできるだけ深刻な脆弱性を見つけたい中小企業の皆様にとっては、効率の悪さがデメリットになります。
結論:日本の中小企業にはGreyboxテストが最も現実的で最適解!
さて、BlackboxとWhiteboxの課題を踏まえると、残るGreyboxテストが、日本の中小企業の皆様にとって最も現実的でバランスの取れた最適解であると言えます。
その理由は以下の通りです。
- 効率が段違いに良い
- ある程度のシステム情報やテスト用アカウントがあることで、テスト担当者は手探りの情報収集フェーズを短縮できます。その分、より効率的に、システムの奥深くに潜む脆弱性を見つけ出すことに時間をかけられます。限られたテスト期間で、より多くの成果が期待できます。
- 現実的な攻撃シナリオに近い
- 内部に存在する弱点(例えば、従業員のアカウントが漏洩した場合の危険性や、特定の権限を持つユーザーからの攻撃など)をシミュレーションする上で、Greyboxテストは非常に適しています。外部からの情報漏洩だけでなく、内部不正や、システムの一部に侵入された後の攻撃拡大といった、現実的なリスクシナリオを想定したテストが可能です。
- 費用対効果が高い
- 効率的にテストが進められるため、Blackboxテストと比較して、より深い脆弱性を少ない工数で見つけられる可能性が高まります。Whiteboxテストのような莫大なコストもかかりません。つまり、費用を抑えながら、質の高い、かつ自社の状況に合ったセキュリティ診断を受けることができるのです。
Greyboxテストで提供すべき情報って、具体的にどんなもの?(Webサイトの場合)
「ある程度の情報を提供する」と言われても、具体的に何を渡せばいいの?と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。ウェブサイトのペネトレーションテストをGreyboxで行う場合、一般的に以下のような情報を提供いただけると、非常に効率的で質の高いテストが可能になります。
- テスト対象のURL: これは必須です。お客様のウェブサイトのアドレスですね。
- テスト用ユーザーアカウント: ログイン機能があるウェブサイトであれば、ログインできるユーザーアカウント(例:一般会員用、可能であれば管理者権限に近いアカウントも)をいくつかご用意いただけると助かります。これにより、ログインした後に利用できる機能に潜む脆弱性(例えば、他のユーザーの情報が閲覧できてしまう、権限がないはずの操作ができてしまうなど)を詳しくテストできます。
- 簡単なシステム構成の概要: 例えば、「WordPressを使っている」「〇〇というクラウドサービス上で動いている」「外部の△△というシステムと連携している部分がある」といった、ざっくりとした情報でも構いません。テスト担当者がシステムの全体像を把握するのに役立ちます。
- API仕様書(APIがある場合): ウェブサイトが外部と連携するためにAPIを利用している場合、その仕様書があると、APIに関する脆弱性を効率的にテストできます。
これらの情報は、ほとんどの中小企業の皆様にとって、システム担当者の方やウェブサイトを開発・保守した会社に聞けば、特別な準備や負担なく提供できるものばかりのはずです。そして、これらの情報を提供することで、テストの質とスピードが格段に向上し、結果として費用対効果の高い診断が可能になります。
Blackboxテストを選ぶのはどんな時?(非常にレアケース)
では、Greyboxテストではなく、Blackboxテストを選ぶべきケースはあるのでしょうか?
これは非常に限定的でレアなケースだと考えて良いでしょう。例えば、買収を検討している企業のシステムを、先方に知られることなく(情報を一切得ずに)外部からテストしたい、といった特殊な状況です。あるいは、社内にシステムに関する情報を持っている担当者が全くおらず、必要な情報を集めるのが物理的に不可能、といった場合などが考えられます。
しかし、通常はGreyboxテストに必要な情報(URLやテストアカウントなど)は提供できるはずです。そうであれば、前述の通り、効率や網羅性の観点からGreyboxテストを選択する方が、圧倒的にメリットが大きいと言えます。
Greyboxテストのデメリットは?
Greyboxテストを選択することによる、お客様側の目立ったデメリットはほとんどありません。
「テスト担当者に情報を渡すのが怖い」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、信頼できるセキュリティベンダーであれば、お客様から提供された情報は厳重に管理されます。むしろ、テストに必要な情報を提供しないことで、テスト担当者が手探りで時間を費やし、隠れた重要な脆弱性を見落としてしまうリスクの方が高くなります。
つまり、情報を「小出しにする」ことに、お客様側にとってのメリットはほぼ無く、効率が落ちたり、見つかる脆弱性が限定的になったりするデメリットの方が大きいのです。
迷ったら「Greyboxで」と言えば大丈夫!
日本の中小企業の皆様が、セキュリティベンダーから「ペネトレーションテストはどのタイプになさいますか?」と聞かれた時、もう迷う必要はありません。
「Greybox Testでお願いします!」と、自信を持って即答してください。
これが、費用対効果、効率、そして現実的なリスクシミュレーションという観点から見て、多くの中小企業の皆様にとって、最も賢明で現実的な選択だからです。
もちろん、貴社のビジネスの特性やシステム構成によっては、最適なテスト方法が異なる場合もあります。その際は、契約を検討しているセキュリティベンダーに、貴社の状況を正直に伝え、Greyboxテストで本当に十分か、あるいは他に考慮すべき点があるか、遠慮なく相談してください。
株式会社lanjutは、長年インドネシアをはじめとする東南アジア市場で、金融機関やIT企業など、特に高いセキュリティレベルが求められるお客様に対して豊富なペンテスト実績を持つLOGIQUE社のプロフェッショナルチームと連携し、日本の中小企業の皆様にも利用しやすい価格 で高品質なペネトレーションテストサービスを提供しています。CEHやCPENTといった国際的な資格を持つホワイトハッカーが、貴社のデジタル資産のセキュリティ強化を強力にサポートいたします。
まず貴社のウェブサイトやシステムにどのような脆弱性が潜んでいるのか、現状を正確に把握することから始めましょう。それが、サイバー脅威から会社を守るための最初の一歩です。
まずはお気軽にお問い合わせください! 貴社の状況に合わせた最適なテストプランをご提案させていただきます。